MQL5 無料EA -バックテスト検証 7「PZ Goldfinch Scalper EA MT5」
「バックテスト検証」シリーズでは、MQL5コミュニティに登録されている無料EAについて、バックテスト結果からそのパフォーマンスを検証しています。皆様のEA選択の際の一助になれば幸いです。
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第 8 回目は「PZ Goldfinch Scalper EA MT5」です。
「PZ Goldfinch Scalper EA MT5」について
MQL5の公式ページからの引用(翻訳)
これは、作者が約10年前に初めて公開した有名なスキャルパー、Goldfinch EAの最新版です。このEAは、短時間に起こる急激なボラティリティの拡大の際にスキャルピングします:つまりレートが急激に動いた後、値動きを想定してトレードします。
新バージョンは、各トレーダーが最適化しやすいようにパラメーターを簡素化しています。
注意点
ティックスキャルパーが危険なのは、多くの要因が収益を台無しにする可能性があるからです。変動スプレッドとスリッページは取引の数学的期待値を下げ、ブローカーからの低いティック密度はファントム・トレードを引き起こし、ストップレベルは利益を確保する能力を弱め、ネットワークの遅れはリクオートすることを意味します。
バックテスト
このEAはtickデータのみを使用します。バックテストの際は、"every tick"モードで実施てください。HOLC(高値-安値-始値-終値)のデータは使用しません。取引の時間軸は関係ありません。
より良いパフォーマンスを得るには、every tickモードで取引したい各シンボルに対して最適化してください。
パラメーター設定
- Trigger: 取引を実施するために必要な価格変動(Pips)。 (default = 10)
- Min Time Window: 価格変動を判断する最小時間 (default = 3)
- Max Time Window: 価格変動を判断する最大時間 (default = 10)
上記設定では、3秒以上10秒以内の間に10pips以上変動した場合に取引を実行する。
- Breakeven: ブレークイーブンを発動する利益(pips)。ゼロは無効
- Breakeven Behavior(ブレークイーブンの際の挙動)
- SLを建値に移動させる
- 取引の利益の半分を確保する
- Trailing Stop: トレーリングストップ。取引毎の利益に対する%で表示されます。
- Trailing Step: ストップロスオーダーの増加割合
- Stop Loss: ストップロス(pips)。値が必要
- Take Profit: テイクプロフィット(pips)。ゼロは無効
- Session Settings: アジア/米国/欧州、各セッションの取引の可否
- Weekday Settings: 平日の取引の可否
- Money Management Behavior(マネーマネージメントの挙動)
- それぞれのトレードのロット数を自動計算
- それぞれのトレードのロット数を手動で設定
- Risk Per trade: トレード当たりのリスクを口座残高に対する%として表示
- Manual Lot Size: 手動でのロット設定
- NFA/FIFO Compliant: 米国のブローカーでのトレードの可否
- Custom Comment: 各オーダーに対するカスタムコメント
- Magic Number: マジックナンバー(EA毎の固有の値)
- Slippage: フィリング価格の最大偏差(points)…要求された価格で発注が実行できない場合に許容できる範囲。
「PZ Goldfinch Scalper EA MT5」は、Tickの動きに反応して取引するEAで「Tick Scalper」に分類されます。この種のEAはバックテスト結果は非常に良いのですが、フォワード環境での再現が難しく、いかにこの乖離を小さくするかが課題です。VPSなどのトレード環境の改善も対応策の一つとされています(保証するものではありません。)。
「PZ Goldfinch Scalper EA MT5」のトレードの様子
- この図はGBPUSD M15のものですが、レートの急変を見事に捉えて取引していることがわかります。
- テイクプロフィット/ストップロス(TP/SL)は50/30 Pips(初期値)に設定されていますが、内部ロジックによって決済されることが多いようです。
通信の遅延時間(レイテンシ)の影響
レイテンシとは、データの転送要求を出してから実際にデータが送られてくるまでに生じる、通信の遅延時間のことを指します。レイテンシが小さければ小さいほど、データアクセスに関する性能は高く、またインターネット通信の状態が良好であると評価されます。FXにおいても、データアクセス速度の遅延は重要で、特に、Goldfinch Scalper EAのような、レートの急激な動きに反応して発注を行うようなEAでは、通信遅延がダイレクトに成績を左右すると言われています。
TIPS: MT5「データ遅延も考慮してバックテストする」
今回はこの機能を利用して、遅延時間がGoldfinch Scalper EAのトレードに及ぼす影響について検討しました。
- 以下の表はデータ遅延(Delays)を0から1000msまでの範囲で変化させた時のテスト結果をまとめたものです。
- 今回のテストでは、遅延時間0から100msまでは、当EAの成績には影響せず、500ms以上で僅かに成績が下がるという結果になりました。
- 目安ですが、日本からの距離で言うと、概ね、200ミリ秒~:ロンドン、100ミリ秒~:ニューヨーク、10~50ミリ秒:国内、10ミリ秒以下:同一サーバー内 とお考え下さい。そうすると、あまり影響はない?
Strategy Testerの「データ遅延を考慮したバックテスト」の結果が、フォワード環境での結果とどの程度一致するのかについては、正確なことはわかりませんが、今回の結果は想像していた以上に、影響がないように感じました。
対応通貨ペアのスクリーニング(多通貨運用の可能性)
Goldfinch Scalper EAのエントリーシグナルは、レートが急激に動いた時に発生するので、頻繁に発生するわけではありません。取引履歴を眺めていると数か月間ノートレードということもあります。そこで、推奨通貨ペア以外での運用可能性を探るために、MT5の「気配値ウィンドウに表示している全ての銘柄について、一度にバックテストして比較する機能」を用いてスクリーニングを行いました。
TIPS:「気配値ウィンドウに表示している全ての銘柄について、一度にバックテストする」方法
- Strategy Teasterの「Optimization」から「All Symbols selected in MarketWatch」を選択してください。
- もしくは、「Symbol」>「All Market Watch Symbols 」を選択してください。
バックテストはNOZAXゼロ口座(ECN)で実施し、初期残高1,000ドル、期間は2017年12月1日~2022年11月30日としました。EAのパラメーターは初期設定のままです。
- 比較銘柄:20通貨ペア – AUDJPY#, AUDNZD#, AUDUSD#, CADJPY#, CADCHF#, CHFJPY#, EURAUD#, EURCHF#, EURGBP#, EURJPY#, EURUSD#, GBPAUD#, GBPCAD#, GBPCHF#, GBPJPY#, GBPUSD#, NZDUSD#, USDCAD#, USDCHF#, USDJPY#
- 推奨通貨ペアとされているGBPUSDはその他の通貨ペアと比べると取引数が多かったものの、予想外なドローダウンに見舞われました。
- むしろ、GBPUSD以外の成績の良い通貨ペアでポートフォリオを組んで運用した方が良いのではないかとも思われました。どの通貨ペアを採用するかは皆さんの判断になりますが、多通貨運用自体は検討してもよいように思います。
推奨通貨ペア/時間軸(GBPUSD M15)でのバックテスト
- 口座: NZXゼロ(ECN)(NOZAX)
- 初期残高: 1,000ドル
- パラメーター: 初期設定
- 期間: 2017年12月1日~2022年11月30日
USDCAD, AUDUSD, EURUSDでのバックテスト
スクリーニングの結果を踏まえ、GBPUSD以外の上位3通貨ペアのバックテストを実施しました。
- 口座: NZXゼロ(ECN)(NOZAX)
- 初期残高: 1,000ドル
- パラメーター: 初期設定
- 期間: 2017年12月1日~2022年11月30日