MQL5 無料EA -バックテスト検証 1 「Dark Venus MT5」
「バックテスト検証」シリーズでは、MQL5コミュニティに登録されている無料EAについて、バックテスト結果からそのパフォーマンスを検証していきます。皆様のEA選択の際の一助になれば幸いです。
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第1回目は「Dark Venus MT5」です。
「Dark Venus MT5」について
MQL5の公式ページからの引用(翻訳)
注意
- ロボットのダウンロードには、最適化の経験が必要です。
推奨
- 推奨する時間軸は設定によって異なりますが、基本的には「M5」、「M15」、設定次第で全ての時間軸で使用可能です。
- このEAは、EURUSD、GBPUSD、AUDUSD、USDCADに対応しています。設定次第でその他の通貨ペアにも対応しています。
- ECNブローカーを推奨します。
- 低遅延のVPSを推奨します。
- 推奨レバレッジ、推奨資金量は設定次第です。
- ユーザーマニュアルおよびいくつかの設定例のファイルはこちら
Dark Venus MT5は高頻度取引を行うナンピンマーチンゲールタイプのEAです。マーチンゲールタイプのEAは、一般的に資金量が少ないとストップアウトになる確率が高いです。いつドローダウンに遭遇するかは「運」次第なので、少額でギャンブル的に2,3週間だけ運用するというのもありですが、安全運用ということならば、長期間耐えられるような余裕を持った資金量あるいは設定で運用することをお勧めします。
「Dark Venus MT5」のトレードの様子

- このEAはナンピンマーチンゲールタイプで、ボリンジャーバンドに沿ってポジションを重ねていき、レートが戻ってトータルで利益が出たところで決済します。パラメーターは、ボリンジャーバンドの期間やシグマ値だけでなく、グリッドでポジションのエントリーを管理できるようになっています。
- ロット数については初期設定では、初期ロット0.01、その後、0.02 ⇒ 0.03 ⇒ 0.04 ⇒ 0.05 ⇒ … と増えます。初期ロットを0.02に変更すると、その後のロット数は、0.04 ⇒ 0.06 ⇒ 0.08 ⇒ 0.10 ⇒ … のように2倍になります。
対応通貨ペア/時間軸のスクリーニング
推奨条件でのスクリーニング
- 選抜基準:筆者の場合、マーチンゲールタイプのEAの選抜(最適化)は、以下の3つに着目して行います。
- ドローダウン(含み損)が小さいこと(長期にわたってストップアウトしないこと)
- トレード数が十分にあること
- ドローダウンの大きさと収益のバランスがとれていること
まずは開発者様推奨の通貨ペア・時間軸でバックテストを実施しました。テストはNOZAX ゼロ口座(ECN)、初期残高10,000ドルで実施し、長期の成績を見るために期間は2008年1月1日~2022年11月30日としました。なおEAのパラメーターは初期設定のままです。
- 比較銘柄:4通貨ペア – EURUSD#, GBPUSD#, AUDUSD#, USDCAD#
※MT5には気配値ウィンドウに表示している全ての銘柄を一度にバックテストして比較する機能があり、対応通貨ペアのスクリーニング等に威力を発揮します。
M5

M15

これらのテスト結果から、候補として残ったのはUSDCAD M15 のみでした。
USDCAD M15のバックテスト
開始時期の違いによってストップアウトする例もあるので、USDCAD M15について、2008年から2022年までの約15年間のバックテストを実施し、ポジション保有中のドローダウン(Equity Drawdowon)について検討しました。
USDCAD# M15
資産曲線を確認すると・・・

初期残高10,000ドル(期間2008年1月1日~2022年11月30日)
ナンピン・マーチンゲールの損益曲線としては非常に優秀であると思います。しかし、証拠金ドローダウン(Equity Drawdown)がテスト期間中2回10,000ドルを上回り、10回は5,000ドルを超えることが明らかになりました。このことから、2008年からのテストで、USDCAD M15がストップアウトに遭遇しなかったのは、単にテスト開始時期が良かっただけだったと言えます。もちろん、資金が潤沢にあれば問題ございませんが・・・。
推奨条件以外の通貨ペア(時間軸)のスクリーニング
続いて、推奨通貨ペア以外で使用できる通貨ペアを探るために、16組の通貨ペアを加えて、同様のテストを実施しました。テスト条件は同じで、NOZAXゼロ口座(ECN)、初期残高10,000ドル、期間2008年1月1日~2022年11月30日、EAのパラメーターは初期設定のままです。
- 比較銘柄:20通貨ペア – AUDJPY#, AUDNZD#, AUDUSD#, CADJPY#, CADCHF#, CHFJPY#, EURAUD#, EURCHF#, EURGBP#, EURJPY#, EURUSD#, GBPAUD#, GBPCAD#, GBPCHF#, GBPJPY#, GBPUSD#, NZDUSD#, USDCAD#, USDCHF#, USDJPY#
M15

M30

スクリーニングの結果、推奨条件以外のものとして、M15のEURJPYとM30のUSDCAD, CADCHF, USDCHF, USDJPYが候補として残りました。これらの通貨ペアを取引した際に遭遇する可能性のある証拠金ドローダウン(Equity Drawdowon)の大きさを見るため、個別のバックテストを実施しました。
選抜された通貨ペア(時間軸)のバックテスト
- 口座: NZXゼロ(ECN)(NOZAX)
- 初期残高: 10,000ドル
- パラメーター: 初期設定
- 期間: 2008年1月1日~2022年11月30日
EURJPY# M15

USDCAD# M30

CADCHF# M30

USDCHF# M30

USDJPY# M30

残念ながら、いずれのテストでも10,000ドル以上の含み損をかかえる結果となりました。これらについてもテスト開始時期が良かっただけですね。ただし、USDCHF M30については、かなり安定しているようで、テスト開始から13年間以上にわたって低ドローダウンを維持し、2021年にはじめて大きなドローダウンに見舞わてしまったようです。
マーチンゲールタイプのEAは時間軸が長くなるほど取引数が減り利益も減りますが、安定する傾向にはあります。「Dark Venus MT5」も例外ではなさそうです。2021年のUSDCHF M30で観察されたような大きなドローダウンのリスクを最小限にするためには、1時間足でゆっくり取引させるのも一計です。
USDCHF H1でのバックテスト
参考として、30分足のバックテストで最も安定していると推察されたUSDCHFの1時間足でのバックテスト結果(損益曲線)をご紹介します。
USDCHF H1

初期残高10,000ドル(期間2008年1月1日~2022年11月30日)
- 1時間足で稼働させることによって、かなり安定し、テスト期間中の証拠金ドローダウンも10,000ドルを超えることはありませんでした。
ただし繰り返しになりますが、ナンピンマーチンゲールタイプのEAには万が一のことが十分にあり得ますので、油断は禁物です!仮にマーチンゲールタイプのEAを運用するとしたら、最低限、証拠金最大ドローダウン(Equity Drawdown Maximal)の2倍以上の資金で運用開始したいところです。
公式サイトでは、パラメーターの設定例(SET File)も公開されています。しかし、ブローカー(サーバー)が変われば成績が大きく変わると思われますので、「提供されている設定」をそのまま使うのではなく、ご自身の環境に合わせて最適化
するのが良いと思います。MT5ではヒストリカルデータはブローカーから提供される仕様となっており、MT4よりも格段にバックテストが容易で精度も高くなっていますので、是非トライしてみてください。
「Dark Venus MT5」の5分足, 15分足での運用はトレード数が多く利益率も高いので魅力的ではあるのですが、運が悪いと運用開始直後にドローダウン/ストップアウトに陥るようなリスキーな設定です。
「私は決してドローダウンには遭わない!」という自信のある方のみ、短期勝負でトライしてみてはいかがでしょうか?(自己責任でお願いしますね。やばくなったら追加入金できるだけの十分な資金をご準備下さい。)